オートクレーブ成形を理解する

金属、樹脂とは大きく違う!?
CFRP・カーボンの成形方法「オートクレーブ成形」について

カーボン・CFRPは複合材料であるため、金属や樹脂、木材とは成形方法は大きく異なります。そのため、設計の考え方も異なる点が多く、設計者はそのCFRPの成形方法を念頭に理解しておく必要があります。

CFRPにも、様々な種類や製法がありますが、ここでは基本となる、プリプレグを用いたドライカーボンの製造手順について理解しましょう。

オートクレーブ成形の流れ

オートクレーブ成形は、プリプレグと呼ばれるシート状のカーボンを、型に重ね合わせ、高圧下で熱硬化させる工法です。各工程の詳細は以下の通りです。

1. 型の設計、製作

プリプレグ(シート状のカーボン)を貼りこむ型を設計、製作します。鋳造や射出成型で用いる金型と同じ役割を持ちますが、金属型でも、アルミ合金を用いることもあれば、CFRPが低熱膨張材料であることを考慮して鉄系の低熱膨張合金もよく使われますし、CFRP自体を型として用いることもあります。試作や少量生産のケースでは、より低価格で加工性の良い石膏型も用いられます。CFRPが金属プレスや射出成形などに比べて、開発試作や少量生産に適する所以です。

型にまつわるCFRPの設計ノウハウを他の記事で解説していますので、是非こちらも参考にしていただければと存じます。
カーボン・CFRPにおけるアンダーカットと型割
カーボン・CFRP成形時の抜きテーパについて

2. 離型剤の塗布

CFRPが滑らかに脱型できるよう、製作した型の表面に離型剤を塗ります。離型剤には、型表面に焼き付けて繰り返し使用するタイプ、離型剤自身が壊れる毎回塗布タイプ、 型表面にシートを貼るタイプなどがあり、成形品に求める仕様によって使い分けます。

3. プリプレグのカッティング

オートクレーブ成形では炭素繊維にあらかじめ樹脂に含浸させた、プリプレグという中間材料を原料として使います。プリプレグはシート状になっており、厚さにもいろいろと種類がありますが、100μm〜250μmのものが一般的です。
プリプレグシートのカッティングは、従来は手作業でやることもありましたが、寸法精度や裁断面の品質維持のために現在ではカッティングマシンを用いることが多くなりました。

4. 積層(ハンドレイアップ)

カットしたプリプレグを型に貼り付け、積み重ねていきます(積層)。この際、強度や剛性など、特性を発現させたい方向に炭素繊維が並ぶよう(配向)、その組み合わせや積層順序を考慮します。これを積層設計と言います。
積層は、単純にプリプレグシートを平面状に積み上げていくだけでなく、三次元形状を持った型に沿って積み上げていくことになりますので、曲面に対する積層ができるようカットパターンを工夫する必要があります。

参考:CFRP・カーボンのピン角・C面・R面

金属板のプレス成形と異なり、プリプレグシートを部分的に積み増すことにより、成形品の板厚を部分的に変化させ、補強したり、構造物の剛性を上げることが出来るのも、積層構造であるCFRPの特長です。

積層構造を利用したCFRPの剛性確保

5. シール

積層したプリプレグの上から雰囲気で加圧するため、型と空気を通さないプラスチックフィルムとの間でシールします。

6. バギング

シール材と型の間に含まれる空気を引き抜きます。プリプレグを硬化させる際に空気が残っていると成形品内部にボイドと呼ばれる空孔が出来てしまうため、プリプレグの層間や型、シール材との間に空気が残らないよう真空引きします。

7. 硬化(オートクレーブによる加圧と加熱)

プリプレグをオートクレーブと呼ばれる圧力容器に入れ、加圧、加熱させ、硬化させます。
使用されるプリプレグの種類や、形状にもよりますが、一般的にオートクレーブ成形は数時間かかります。エポキシ樹脂の硬化時間は数分から数時間ですが、オートクレーブ内部で成形品の温度に偏りが出ると、成形変形の原因となりますので、成形品全体が均一な昇温となるよう、制御しながら加熱するため、昇降温に時間を要するためです。

なお、量産製品では、オートクレーブにはよらず、1〜2分で硬化が完了する即硬化型の樹脂を用いて、タクトタイムを圧縮する生産方法を適用することが可能です。

8. 脱型

硬化後、プリプレグが硬化してできたCFRP成形品を型から外します。型表面には離型処理が行われていますが、若干の接着力によって張り付いていますので、力尽くで外そうとすると破損する場合がありますので注意が必要です。

型から外したCFRP

9. 仕上げと後加工

脱型後、必要に応じて外周をトリミング、端面を滑らかに仕上げます。また、製品によっては、表面処理や穴あけなどの後加工を行います。

表面の後加工処理の例

参考:アクティブサーモグラフィによるCFRP・カーボンの非破壊検査

10.まとめ

以上のようにCFRPのオートクレーブ成形は金属、樹脂の成形とは違う点がいくつかあります。特に工程「4. 積層(ハンドレイアップ)」、「8. 脱型」については、オートクレーブ成形のキーとなる工程で、製作物の形状を大きく左右する可能性があります。CFRP・カーボン製品を作る際、検討していただければ幸いです。